別れのご挨拶の準備

 夫には、抗がん剤の点滴治療による副作用が、かなりきつかったようだ。

 吐き気がする、皮膚に湿疹が出る、食欲がなくなる、気分が悪い、眠れない、etc.

 

 2回(週1回で2週間)点滴治療を受けた後で、夫は点滴の中止を決めた。

 3週目の今週後半に、抗がん剤治療中止について、主治医と相談するそうだ。

 

 何も治療をしなければ、秋(9月)以降の生存は危ういと言われている。

 抗がん剤治療をやめれば、あと半年足らずしかない。

 

 非常に近しい人々(主に、夫が公私ともに親しくしている人々)には病状を知らせており、「集い」も予定しているが、それよりはいささか距離の遠い人々への通知を計画しなければならない。その人々の中には夫が食事を共にしたい人もおり、私との共通の知人には、私宅での食事会をアレンジするのが、目下の私の仕事である。

 

 

 

 

梅干!

 副作用がきついようで、夫は、抗がん剤の点滴後、湿疹が出まくっている。

 

 事前に主治医からその件を聞いていた夫の要望で、保湿クリームを買いに行った。

 いまどきのドラッグストアには薬剤師さんが常駐しているのかどうか、よく分からない。なので、何十年も前からある薬局(今では俗っぽいドラッグストアになっているが)に出向いて、レジカウンターで相談を持ちかけた。

 すると、私の話(これから抗がん剤治療を受ける夫が、主治医に、点滴後、皮膚障害が現れる可能性があるので、クリームを準備していた方がいいと言われた)を耳にした薬剤師さんが、ぬうっとレジに現れて、相談にのってくれた。

 彼女がアドバイスしてくれた薬品2種類(クリームタイプ&ローションタイプ)を、夫はマメにぬっているようだ。

 が、朝は湿疹が消えて綺麗だが、午後になると発疹が出るという症状には変わりがないため、次回の受診時に、抗がん剤の内容や治療継続についても相談するとのこと。

 

 食も、またたく間に細くなった。

 夫の好物と栄養バランスを考えた上で消化の良い献立を考えているのだが、今夜はどれも半分ずつぐらい残した。

 

 それを予測して、「卵雑炊」を準備していた。結婚する前から2人で通っていたお店で、2人揃って大好きだった〆のご飯である。

 

 ちょっとびっくり。「小さなお椀一杯でいい。梅干しはいらない」と言っていたにもかかわらず、信じられないスピードで雑炊をすすり、別皿に乗せた梅干し&シソをあっという間に食べた。見ていると、動物的感覚で、欲するものを貪ったという印象だ。

 

 口先で言う好き嫌いや食欲は一旦棚に上げて、栄養補給のために必要なものを準備した方がいいな、と、思い至った今宵だった。

 

 ただ、課題もある。夫が残したものを全部平らげてしまう私の、カロリー過摂取という問題である。かなり難題。

 

抗がん治療開始

 前回の記述から3週間目。今日、夫の抗がん剤治療が始まった。

 副作用で苦しむのは嫌だという夫の要望に従い、緩めの抗がん剤(点滴)治療である。手術不可能の身ゆえ、残された治療法は、ほぼない。

 

 夫は、結婚した20代から70代の現在まで、体重の変化はほぼない。

 一方、結婚当初は夫より10キロほど軽かった私の体重は、今やなんと10キロも超過! 心身ともに逞しい私は、取り入れた栄養素をそのまま身につけて「成人病予備軍」体型になったが、神経質で繊細な夫は、口に入れた栄養素を十分に消化吸収できなかったのか、アルコールでエネルギーを補充(?)していたという感じである。

 

 夫は今日、点滴終了後はそれなりに元気だったが、夕食時には気力が減退していた。

 

 私はいちおうウェブサイトなどをチェックして、膵臓がん患者の病状(消化機能の減退)に対応する料理を準備しており、夫も、私の用意した夕食はすべて食べてくれたのだが、かつては私の倍速ぐらいで開けていたワインをグラス一杯も飲めず、お茶が欲しいと言ってきた。

 3週間前、ドクターの前で「酒をやめる気はない」などと豪語していたにもかかわらず、薬の副作用もあってか、身体が受け付けなくなっているようだ。

 

 この間、遺言についてもあれこれ話し合っている。

 財産というほどのものはないので「お金」のトラブルはないが、夫のこだわり(兄弟姉妹を含めて、自分の指定した人以外には、当分(いわゆる49日まで)死を知らせるなとか、葬式も通夜も拒むので直葬せよとか、墓は拒否するので散骨せよ、とか)がきついので、私から、「公証人役場」で書類を作成するよう、強く要望した。

 

 実際に役場に出向いた夫は、手続きの面倒くささにうんざりしたようで、「これでないとダメなのか」と、しつこく何度も言い募ってきたが、私はしつこさの倍返しで、「ちゃんと書類を残してくれ」と主張している。なんとなれば、この問題がスムーズに解決できず、親族関係が破綻した例を、一度ならず見ているからだ。

 

 今週末には公証人役場であれこれの手続きが進みそうなので、来週あたりは、私も何かをしなければなrにのかもしれない。

 

愛する命との別れ方

 驚天動地。このブログを別テーマで開こうと手続きをした数日後、夫から、予想だにせぬ告知があった。胃の調子が悪く、胃がんを疑って受信したところ、末期の膵臓がんであることが判明した、という。

 

 夫が「胃がんに違いない」と騒いで受診した結果「シロ」だと判明したことが過去に2度あって、またしても胃がんあるある詐欺かと楽観していたのだが、今度ばかりはそうではなかった。がんの中でも治療の難しい膵臓がんが肝臓にも転移しており、手術は不可能。抗がん剤治療を行っても、余命は1年余という診断である。

 

 おーい、おーい!!(何に向かって叫んでいるのか不明。苦笑)。

 

 本日(4月20日)、病院の緩和ケア専門医と面談して、最期までの今後の治療方針(?)や日常生活の送り方についてアドバイスを受けてきた。どのような治療法を選ぶかは本人に委ねるつもりである。

 

 せっかく開いたばかりのブログ。有意義に活用していきたい。